吸入麻酔薬は肺胞から血液中に溶解し、脳を含めた体内の各組織に分布して初めて麻酔効果を発揮する。麻酔薬の吸 入から脳内組織に到達するまでに一定の時間を要するが、動脈血濃度および脳内濃度は速やかに肺胞濃度と平衡に達 することがわかっているため、吸入濃度が肺胞濃度と等しくなった時点で麻酔の導入が完了したと考えてよい。
換気量が増すほど肺胞内濃度が上昇し、導入が速くなる。
機能的残気量が大きいと吸入ガスが残気で薄められるので導入が遅れることになる。逆に小児や肥満などでは横 隔膜が挙上して機能的残気量が小さくなり、麻酔導入が促進される。
心拍出量が大きいと肺胞から多くの麻酔薬が運びさられて肺胞気濃度の上昇が遅れるため、導入が遅れる。
以下の経路をとって作用が発現する。
肺胞換気量が大きく、機能的残気量が少ないほど導入が速やかとなる。 また心拍出量が大きいと肺胞から多くの麻酔薬が運びさられて肺胞気濃度の上昇が遅れるため、導入が遅れる。
現在用いられている唯一のガス麻酔薬である。
常温では液体であり、気化器を用いる必要がある。
古典的な揮発性麻酔薬であるが、その爆発性のゆえに電気メスを多用する現代では利用されない。
気管支拡張作用を有するため喘息に適するが、アドレナリンと併用すると不整脈を惹起する。 また悪性高熱症 malignant hyperthermia のトリガーとなりうる。
痙攣誘発作用を持つ。
刺激臭を持つ。代謝率が低い。
血液/ガス分配係数が0.63と極めて小さい。
疼痛刺激を与えたときに50%の患者で体動があるときの肺胞内麻酔薬濃度であり、吸入麻酔の力価を表す指標となる。 すべての吸入麻酔薬に適応でき、各吸入麻酔薬のMACは相加的であることがわかっている。
血液1[ml]に溶解するガスの量を意味する。あるいはガス相と血液相で分圧平衡に達したときの分圧比である。 これが小さいほど血液に溶解する麻酔薬の量が小さくなり、肺胞気と血液の分圧が等しくなるまでの時間が短くな るので、導入が速くなる。
この値は麻酔の強さに比例する。
高濃度のガスと低濃度のガスを同時に吸入させると、高濃度のガスが大量に血液に取り込まれ、その結果として 低濃度のガスの肺胞内濃度が相対的に上昇する現象をいう。麻酔薬の導入を速めるときに利用される。
現在用いられている唯一のガス麻酔薬である。
以下の特徴をもつので使用に注意が必要である。
このため導入および覚醒が極めて速い。
投与を中止するとそれまで血中に溶解していた亜酸化窒素が急速に肺胞中に拡散するため、肺胞内の酸素分圧が低 下する現象である。 これを防止するには吸入中止後から数分間は100%濃度の酸素を投与する必要がある。
体内に閉鎖腔 closed air cavity があると腔が膨張して危険である。
体内の閉鎖腔はほとんどが窒素で占められており、亜酸化窒素は窒素よりも血液への溶解度が30倍ほど高い。 そのため窒素が閉鎖腔から血液に溶解して出ていくよりも、吸入された亜酸化窒素が血液に溶解して閉鎖腔内に拡 散する速度のほうがまさることになる。 したがって気胸・イレウス・空気塞栓などでは本剤の使用は禁忌となる。
強力な鎮痛効果を持つが、手術侵襲に耐えるほどではない。呼吸抑制はほとんどない。
連日投与で骨髄抑制を来たすことがある。
気管支拡張作用を有するため喘息に適するが、アドレナリンと併用すると不整脈を惹起する。 また神経筋接合部遮断薬(サクシニルコリンなど)との併用で悪性高熱症のトリガーとなりうる。
MACは0.75と低いので麻酔作用は強力である。
このため気管支喘息の患者に適している。
このため産科手術では弛緩出血の原因となりうる。
異常な高熱と酸素消費量の増大ならびに二酸化炭素の蓄積を呈し、適切な治療を怠ると死に至る。 特に本剤と神経筋接合部遮断薬(サクシニルコリンなど)との併用で生じることがあり、家族内発症も少なくない。
生体内代謝率が高いため。
本剤が心筋のエピネフリン感受性を高める効果に起因するので、本剤とエピネフリンの併用は禁忌となる。
痙攣誘発作用を持つ。
刺激臭を持つ。生体内代謝率が低いので肝障害・腎障害が小さい。
悪性高熱症の原因となる可能性がある。
血液/ガス分配係数が0.63と非常に小さく、導入および覚醒がきわめて速い。 また気道刺激性が小さいので小児にも適している。 MACは2前後(1.71)と揮発性麻酔薬の中ではもっとも大きい。
Akimichi Tatsukawa