肥大型心筋症のなかでも、特に肥大が大動脈弁直下に生じたために、左室流出路の閉塞を来たしたものをいう。 血行動態および臨床症状が大動脈弁狭窄症に似るので鑑別を要する。
左室の肥大が大動脈弁直下に及んだために左室流出路の閉塞を来たす。さらに本症では心筋の収縮力は正常に保たれ ており、左室の収縮に伴なって閉塞がむしろ増強される。 進行すると拡張型心筋症の病態を示してくることがある。
心筋収縮力の増強以外に左室流出路の閉塞を増悪する原因としては左室容量の減少がある。
初期には無症状で経過するが、10〜30歳代に狭心痛や呼吸困難で発症する。
左室流出路の駆出時の狭窄に起因する。静脈還流が増加すると心室腔が広がるために雑音が減弱するという特徴 を持つ。
立位あるいはValsalva負荷などで狭窄が強まると心雑音が増大する。 ハンドグリップ試験・メトキサミン静注では血管が収縮して血圧が上昇し、大動脈圧と左室圧の較差が低下する ため、雑音は減少する。 また頸部へ放散しない点が大動脈弁狭窄症と異なる。
心尖部において第1音の直前に聴取される異常心音である。 左心室のコンプライアンスが低下したために代償的に心房が収縮して心室に駆出された血流が心室壁に衝突するさ いの音である。 肥大型心筋症でよく聴取されるが、大動脈弁狭窄症や高血圧などで左室圧が高まった際にも聴取される。
心尖拍動はおもに左心室の収縮によって生じ、左心不全で左室肥大を来たした場合には拍動が大きくなる。 収縮力が保たれたまま左室肥大を呈する本症ではよく生じうる。
乳頭筋の肥厚のために僧帽弁を支える腱索が弛緩し、収縮期に血流に押されて僧帽弁が前方に飛び出 す異常運動をいう。
心筋の肥大が特に心室中隔の左室側に生じ、一方で右室壁には肥厚は少ないことをいう。 しばしば大動脈弁の直下が肥厚し、閉塞型となる。
大動脈弁が収縮期中期に突然閉鎖する。
心エコー像は こちら。 SAMおよび心室中隔肥厚が見られる。
本来ならば心尖部と大動脈弁下部の圧はほぼ同じはずであるが、本症では閉塞によって大動脈弁下部の圧が減弱 する。
期外収縮の後には代償性休止期が訪れるが、その直後において大動脈圧が低下する現象である。 通常ならば期外収縮後には長い代償性休止期があるために前負荷がまして収縮力も増すために大動脈 圧は上昇するはずである。 しかし閉塞性の肥大型心筋症では、増強された左室の収縮にともなって閉塞も増強されるために、期外収縮後の 大動脈圧が逆に低下してしまう。
ST-T変化、なかでも陰性T波が特徴的である。
収縮期の脈波が二つの峰を形成するもの。
激しい体動や運動競技は不整脈を誘発するため厳禁である。
左室流出路狭窄の軽減を目的とする。
心筋の収縮を抑制して左室流出路の狭窄を改善する。 逆に心筋の興奮性を高めるジギタリス製剤・β作用薬は左室流出路の狭窄を強めることになるので、禁忌である。
肥大した閉塞部位を切除したり、中隔肥厚を切開する手術が施行されることもあるが、長期予後はよくない。
Akimichi Tatsukawa