アテローム性動脈硬化によって冠状動脈が閉塞して生じる心筋の虚血性壊死をいう。 激しい胸痛で発症し、特異的な心電図所見と心筋逸脱酵素の上昇を特徴とする。
発症のごく早期(2時間以内)に致死的不整脈や心原性ショックを併発し、死亡することも稀ではない。
脂質性プラーク lipid plaques 内で新生血管の破綻による出血が生じ、これが塞栓となって心筋梗塞を惹起する。
締め付けられるような重い胸痛が突発し、しばしば背中や肩に放散する。ただし無痛性心筋梗塞もある。
抹消循環障害による四肢末端の冷感を訴える。
心尖部で聴取される異常心音である。 左心室のコンプライアンスが低下したために代償的に心房が収縮して駆出された血流が心室壁に衝突するさ いの音である。
所見は発症数時間後から出現する。
心室性頻脈を誘発することがあるので要注意である。
心筋壊死によって心筋から血中に遊出してくる酵素の活性を検出する。
Laboratory findings begin in the first few hours, with appearance of CK-MB, which peaks in 6 to 8 hours. Total CK also increases over the first day, and both then disappear in 1 to 3 days. LDH begins to appear at the end of the first day, peaks over 2 to 4 days, then disappears over 1 to 2 weeks.
発症早期より上昇するが、特異性は低い。
発症後24時間頃にピークとなり、3日後には正常値に戻る。
心筋特異性が高く発症後数時間で上昇するが、24時間程度で正常値に戻る。
肝細胞と心筋をはじめとする筋細胞に多く含まれ、アミノ酸と糖代謝を架橋する。
本タンパクはCK-MBや心筋ミオシン軽鎖とともに心筋特異性が高い。ミオグロビンほどではないが発症早期か ら上昇し、発症後数日間にわたって高値を示し続ける。
発症後24時間ほど経ってから上昇し、1週間ほど持続する。 分画では LDH-1 が LDH-2 よりも上昇する所見 flipped pattern が特徴的である。
タリウムシンチでは心筋壊死部の血流途絶を反映して、その部位がアイソトープの集積欠損像 cold spot として 描出される。 一方、99mTc-ピロリン酸シンチでは正常心筋には集積せず、急性心筋梗塞巣に集積して hot spot を形成する。
まずグリコーゲンを消耗し、やがて細胞質、特にミトコンドリアの浮腫が生じる。
心筋は伸長し、凝固壊死する。核ははじめ腫大しやがて消失する。
間質への好中球の浸潤が盛んになる。心筋には wavy fiber patternが見られる。
好中球は消失し、壊死心筋組織が肉芽組織となって線維化する。
洞房結節および房室結節は右冠動脈に支配されるので、右冠動脈すなわち下壁梗塞に合併することが多い。
心筋壊死、心不全とそれに伴うアシドーシス、自律神経系の異常などによって誘発される。 さらに不整脈が心不全を増悪させるという悪循環を形成する。
心筋壊死に伴なって心筋自動能の亢進・伝導障害・再分極・交感神経の刺激亢進などが生じ、これ らが心室性期外収縮に由来する頻拍を招く。しばしば壊死部が原発部位となる。
洞房結節への血流障害に起因する。
下壁梗塞も前壁梗塞もともに伝導障害をきたしうる。 しかし左冠動脈前下行枝はHis束をはじめ左脚や右脚を栄養しているので、下壁梗塞に合併する房室ブロックに比 べて重篤な不整脈を伴ないやすい。
右冠状動脈が閉塞した場合は、洞房結節の虚血による徐脈や房室結節の虚血による房室ブロックが生じる。
右脚は左冠動脈の前下降枝 LAD に支配されるから、前壁梗塞によって発症する。
左心不全によって左心が血液を駆出できないと、肺の鬱血により肺毛細管圧が上昇し、肺水腫を招く。 症状としては起坐呼吸や心臓喘息などの呼吸困難が現れる。
心拍出量が急激に減少したために全身の循環不全が生じる。
初回の貫壁性梗塞や高血圧を基礎に持つ症例に生じやすく、経過が急激であるため救命は困難である。 危険因子は高血圧の持続をはじめ高齢者・ST再上昇・胸痛などである。
貫通性梗塞の場合に、壊死細胞由来の自己抗体に対する免疫応答が生じ、線維素性心外膜炎を生じたもの。
梗塞を起こした心室壁が心内腔からの圧力によって外方へ膨張したもの。
特に前壁梗塞や左心室内血栓が見られる場合には発症の危険が高くなる。
下壁梗塞後に僧帽弁の腱索が断裂し、乳頭筋不全によって僧帽弁閉鎖不全症となる。 心筋梗塞後から3〜5日目頃に生じやすい。
前壁梗塞に生じやすく、心室中隔欠損と同じ病態となる。
初回の貫壁性梗塞や高血圧を基礎に持つ症例に生じやすく、経過が急激であるため救命は困難である。 危険因子は高血圧の持続をはじめ高齢者・ST再上昇・胸痛などである。
しばしば仮性瘤 pseudoaneurysm を形成する。
急激に血圧が低下して意識を消失する。左室の自由壁破裂に続発することが多い。
前壁の心筋梗塞に際して発症後1週間ほどに左心不全として発症することが多い。
急性の僧帽弁閉鎖不全症として発症する。
突如として意識消失とショック状態に陥るのが典型的である。 ただし心嚢血腫では胸痛や悪心などが亜急性に経過するにとどまる場合もあるので注意を要する。
治療後にST上昇が持続する場合や陰性T波に転じない所見は本症を示唆する。
心電図上ではある程度血行動態が保たれているはずなのに心拍出量が極度に低下している状態をいう。
本症の診断に簡便かつ有効である。
この際、短時間に確立可能な経皮的心肺補助装置 PCPS による血行動態の維持が必要となる。
左室梗塞を起こした心室壁が心内腔からの圧力によって外方へ膨張したもの。
心筋炎や心筋症でも見られるが、心筋梗塞によるものが最多である。 特に貫通性の前壁梗塞の慢性期合併症として起こりやすい。
心室壁への張力負荷に伴なって、収縮力の減退した梗塞巣を起点として梗塞巣が拡大して瘤を生じる。 破裂することはないが、心室性不整脈や心不全を招く。
特に心エコーが有効である。
心陰影の突出を見る。
残存した心室に十分な機能が期待できるならば外科的に切除する必要がある。
前壁の心筋梗塞に生じやすく、心室中隔欠損と同じ病態となる。
急性心筋梗塞発症後から1週間以内に突然の呼吸困難で発症することが多い。
突然の肺鬱血に起因する。
全収縮期雑音を聴取する。
血液鬱滞と体液貯留を軽減する。
心不全を合併していない場合に心臓の負荷を軽減するために用いる。
心不全を合併した急性心筋梗塞に対して心機能を改善するために用いる。
胸痛が強い場合は鎮痛剤としての投与が必要となる。
t-PAやウロキナーゼを用いて血栓を溶解するもので、急性期の治療となる。 ただし大動脈解離に合併した急性心筋梗塞では血栓溶解剤は大動脈解離を増悪させる危険があるため、禁忌となる。
再疎通療法の golden time は6時間以内であるので、急性心筋梗塞を疑わせる症例で発症後6時間以内であれば 冠動脈再疎通療法のできる施設に搬送することが必要である。
原則として全例に2〜5[L/min]の酸素吸入を行なう。胸痛が強い場合には塩酸モルヒネ 5〜10mgまたは塩酸ブプレノ ルフィン(レペタン) 0.2mgを静注する。
心カテーテルを冠状動脈に挿入し、狭窄部位でバルーンを膨張させて血管を拡張する。 器質的狭窄のある症例に対して用いられるが、左主幹部閉塞に対しては禁忌となる。 侵襲が少ないという利点があるが、高率に再狭窄を生じるという短所をもつ。
主要冠状動脈に高度な器質性狭窄があり、狭窄部位の抹消が十分に太く、狭窄部以下の心筋が壊死に陥っていない 場合に適応となる。 特に左主幹部狭窄ではPTCAが禁忌であり、突然死の危険も高いため、絶対適応となる。
グラフトには内胸動脈がよく用いられる。
大動脈内にカテーテルを挿入し、バルーンを収縮期に虚脱させて左心室の仕事量を軽減し、拡張期に膨 張させて冠動脈への血流量を増加させる。
Akimichi Tatsukawa