健常者では鼻腔や咽頭、腸管、尿道などの粘膜面に定住する常在菌。気管支肺炎を呈する。
βラクタムと結合しないペニシリン結合タンパクPBP2'を産生することによって耐性を獲得した黄色ブドウ球菌。
感染性肺炎のもっとも代表的な起因菌であり、特に二次感染で大葉性肺炎を生じる。 ペニシリンが有効であったが近年急速に耐性を獲得しつつある。 慢性下気道感染症において急性増悪をもたらす。
インフルエンザウイルス感染後に感染し、気管支肺炎を呈する。慢性下気道感染症において急性増悪をもたらす。
膿性痰と呼吸困難が強く、急速に重症肺炎へと進展する。病理組織としては大葉性肺炎となる。 アルコール依存症、糖尿病などの基礎疾患を有する患者に多い。
多くの薬剤に容易に耐性化するため、アミノ配糖体・第3世代セフェム系・ニューキノロン等の抗菌薬が用いられる。
細胞内寄生を行なうグラム陰性桿菌であり、マクロファージ内でよく増殖する。 グラム染色は無効なため、鍍銀染色で検出する。 細胞内に寄生するためにβラクタム系は無効であり、治療はマクロライド系を用いる。
グラム陰性球菌で、大部分がペニシリナーゼ産生菌。慢性下気道感染症において急性増悪をもたらす。
一つの肺葉全体の病変となり、X線像では気管支が air bronchogram を呈する。 肺炎連鎖球菌や肺炎桿菌によるものが多い。
細気管支と肺胞を含む小葉単位の病変であり、気腔内に好中球・単核細胞の浸潤が生じる。主に黄色ブドウ球菌 やインフルエンザ菌によるものが多い。
基礎疾患のない健康人に発症した肺炎であり、肺炎球菌を最多としてインフルエンザ菌とモラキセラ・カタラーリス によるものが7割を占める。
MRSA・緑膿菌・大腸菌・結核が多い。
嚥下障害、咽頭反射、咳反射の低下がある患者が、口腔内容物や嘔吐した胃液を吸引することによって感染する。
嫌気性菌が起炎菌であることが多い。これは歯周菌のほとんどが嫌気性菌であり、これを誤嚥するから。
マイコプラズマやクラミジアなどによる感染。
悪寒を伴って急激に発症し、発熱・咳嗽・喀痰・胸痛・呼吸困難を主要徴候とする。 ただし高齢者では発熱は明らかでなく、強い脱水症状による意識障害が見られる。
検体採取法としては、咽頭ぬぐい液・喀痰・肺穿刺・BALFなどがある。
膿性痰は細菌性肺炎を疑わせる。
気管を直接穿刺し、下気道の分泌物を吸引する方法であり、上気道および口腔内の常在菌を回避できる。
細菌性肺炎が重症化すると敗血症に発展するので、特に病原菌が見いだせないような細菌性肺炎では早期に必ず 施行すべきである。
肺胞腔内に炎症細胞の浸潤を伴う化膿性病変となる。
黄色ブドウ球菌による肺炎であり、市中肺炎でも院内肺炎でも見られる。 ウイルス感染に続発し、肺炎や膿胸などの重篤な肺疾患に発展することが多い。
特に乳幼児が罹患しやすく、かつ重篤化しやすい。またウイルス感染に続発するため、冬季に多い。
通常の細菌性肺炎の所見に加えて、膿胸や気瘤 pneumatocele を合併するのが特徴である。
炎症の過程で肺実質内に生じた過膨張性の気瘤であり、肺胞壁の破壊を伴なわず、しばしば自然消失する。
特に菌が血行性に散布された場合に多発性の空洞を形成することがある。
膿胸に発展した場合は緊急に胸腔ドレナージを施行する必要がある。
ペニシリン系がよく効くが、メチシリン耐性が急速に拡大しつつある。 MRSAに対してはバンコマイシンやニューキノロン系を用いる。
肺化膿症とは、肺実質の壊死を伴う化膿性の細菌性炎症において膿瘍や空洞を形成したものをいう。 すなわち細菌性肺炎の重症化したもので、肺炎球菌・黄色ブドウ球菌・肺炎桿菌が代表的な起炎菌である。
黄色ブドウ球菌・肺炎球菌・肺炎桿菌が代表的な起炎菌である。なかでも黄色ブドウ球菌は種々のタンパク分解 酵素を産生して肺組織を破壊するため、本症の起炎菌として最多である。
特にアルコール多飲者・糖尿病・肺癌は罹患のリスクが高い。
このため喀痰を用いた起炎菌の特定が困難となる。
肺炎桿菌や緑膿菌を始め、バクテロイデスや黄色ブドウ球菌などが代表的な起炎菌である。
発熱・咳嗽・喀痰を呈する。
バクテロイデスなどの嫌気性菌が起炎菌であることが多いため、喀痰が腐敗臭を呈する。
画像検査では空洞形成を伴なう原発性肺癌との区別が重要となる。
水平面をもつ鏡面 niveau を形成する。 肺実質の化膿性炎症部位が気管支と交通して内容物がドレナージされると空洞が形成される。
胸膜の炎症により胸腔内に滲出液が貯留し、膿性の外見を呈するもの。
起炎菌の種類から、広域のセフェム系をはじめとして、グラム陰性桿菌に奏効するアミノ配糖体系や、肺炎桿菌を想 定してカルバペネムなどが妥当である。 実際には発症早期には起炎菌の特定は困難であるから、抗生剤は経験的に決められることが多い。
治癒機転を抑制している壊死巣を除去する。
治療開始から2ヶ月を経ても症状が軽快せず、画像検査にて空洞が認められる症例が適応となる。
肺炎連鎖球菌を起炎菌とし、市中肺炎としては最多である。
グラム陽性のランセット状双球菌。溶血性はα溶血を示す。 感染性肺炎のもっとも代表的な起因菌であり、特に二次感染で大葉性肺炎を生じる。 莢膜を持つことで貪食細胞からの攻撃をかわしている。
通常、急激な発熱と胸痛で発症する。
肺外へ血行性に散布され、細菌性髄膜炎や感染性心内膜炎を合併することがある。
長年にわたってペニシリンが有効であったが、近年はペニシリン耐性肺炎球菌 PRSP が急増している。 耐性機序はPBPの変異によるものであり、多くのβラクタム剤に耐性化している。 カルバペネムはまだ感受性がある。
膿性痰と呼吸困難が強く、急速に重症肺炎へと進展する。 古典的には大葉性肺炎となるが、近年では気管支肺炎を呈することも少なくない。
肺炎桿菌はもともと口腔内や腸管内の常在菌であり、アルコール依存症や糖尿病などの易感染性宿主に二次性感染を もたらす。
厚い莢膜を持つ通性嫌気性のグラム陰性桿菌である。口腔内や腸管内の常在菌であり、もともとは弱毒性である。 ムコイド型コロニーを形成するのが特徴である。
エンドトキシンショックを起こしやすく、ペニシニナーゼを持つためペニシリンには自然耐性である。
発症は急激であり、しばしば致死的である。
喀痰は褐色調を呈し、干しぶどうゼリー様を形容される。
エンドトキシンショックを起こし、劇症化しやすい。
もともとペニシリン耐性である。特に第3世代セフェム系のセフォタキシム cefotaxime が有効である。
緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa を起炎菌とした肺炎である。菌交代現象を背景として生じやすい院内感染であり、 免疫不全患者に好発する日和見感染症である。
緑膿菌の病原性は特に強くはないが、免疫力の減弱した宿主に持続感染して薬剤耐性を獲得するので治療がしばしば 困難となり、致死的となることもある。
偏性好気性のグラム陰性桿菌であり、院内での日和見感染の代表的な起炎菌である。
ムコイドは菌表面の多糖体がムチンと反応して形成されるが、好中球によって貪食されにくく、喀痰が粘稠を増す。 またムコイドが気道を閉塞するほか、遊走した好中球が分泌するプロテアーゼが気道を破壊する。 こうして緑膿菌は持続感染を成立させやすく、耐性化しやすい。
喀痰は甘酸っぱい芳香臭を放つ。
緑膿菌は容易に耐性を獲得するので抗生剤の単独投与は禁物である。
結核菌(グラム陽性で抗酸性を持つマイコバクテリア)による肺感染症である。 患者の痰を吸い込むことによって飛沫感染し、多くは初感染巣を保有したままに免疫維持しながら健康を維持している。
幼児期に結核菌を含んだ5μm程度の飛沫を吸引することで初感染が成立する。 初感染巣は右肺底部に多く、胸膜直下の肺胞に定着する。 菌の侵入個所に乾酪壊死と類上皮細胞を特徴とする初感染巣が形成される。 この初感染巣と所属リンパ節腫脹を合わせて Ghon complex という。
多くは結節が石灰化して治癒に至るが、そうでなければ菌はマクロファージ内に潜伏したままにリンパ血行性に移 行し、多臓器に病変を形成する。
以前に菌に感作された宿主の防御能が低下すると、内因性に再燃する。 肺では経気管支的に散布され、特に酸素の豊富な肺尖部(S1,S2,S6)に好発する。 画像上は経気管支散布による小葉中心性の小結節影あるいは分枝状線状影と空洞性病変が特徴的である。 経気道性散布性肺結核で肺野末梢に見られる分枝状構造物を tree in bud という。
結核菌の侵入部位に初感染巣が形成される。
マクロファージがTh1細胞に抗原提示すると活性化されたT細胞がサイトカインを放出し、マクロファー ジを活性化する。 この活性化マクロファージは上皮細胞に類似し、融合してラングハンス型巨細胞を形成する。 こうして宿主は遅延型免疫応答を身につけ、ツベルクリン陽性に転じる。 病変部は乾酪性壊死 caseous necrosis となる。
肉芽腫が血管に侵食すると敗血症に陥り、全身性に粟粒大の結核結節が形成される。 激しい炎症のため白血球数やCRP値が増大し、アネルギーによってツベルクリン反応が陰性化する。 増悪化するのは全体の5%である。
Ziehl-Neelsen 染色で染色すると紅い桿菌が映る。しかし非定型抗酸菌との区別が必要となる。
蛍光染色で結核菌のみを発色させて、視野内の菌数を数える。 鏡検下の視野中にあらわれた菌数で表現され、I号以上で陽性と判定され、III号以上は感染の危険が大きい。
これによって非定型抗酸菌との鑑別が可能になる。
喀痰を検体としてPCRで遺伝子を検出する。 迅速だが汚染による偽陽性が生じやすいほか、死菌でも陽性となるので生物活性を反映しない。
培養は小川培地を用いる。発育には4週間程度かかり、陰性を証明するには8週間かかる。 しかし活動性の確定診断には培養後の Ziehl-Neelsen染色で行なう
皮内に結核菌由来のツベルクリンを注射すると、結核に感染した個体では数日を経て局所の発赤腫脹を生じる。 その機序は、ツベルクリンと反応した感作T細胞がサイトカインを放出し、これが肥満細胞に作用してヒスタミン を分泌させ、血管透過性が亢進することによって生じる。
肺胞充実性の陰影を呈する。
大きな結節周囲に小さな結節が散見される娘病変 satellite lesion が特徴的である。 結節内部に空洞を形成するため、扁平上皮癌や肺アスペルギルス症との鑑別が必要である。
X線画像は こちら、拡大 像は、 こちら。 内部に空洞を伴った小結節が気管に走行に一致して生じている。 あるいは こちら。
胸水内にADAの上昇がみられる。なお胸水を検体としたチールニールセン染色では菌は検出されないこ とが多い。
喀痰よりも検出率が高いことがある。
乾酪壊死を中心にしてラングハンス型巨細胞と類上皮細胞が周囲を取り囲み、さらにその周りをリンパ球と線維芽 細胞が取り囲む。
マクロファージ内で結核菌が増殖し、リンパ節において活性化マクロファージがこれを殺菌する。
マクロファージが類上皮細胞となって炎症部位を分画し、肉芽腫を形成して結核菌を幽閉する。
細胞性免疫の発動によってIV型アレルギー反応が生じ、これが肉芽腫の中心部に凝固壊死を起こす。
膠原線維が形成され、病変は繊維化する。
原則として内科的治療を行なう。ガフキー陽性では原則として入院治療の対象となる。
リファンピシン rifampicin とイソコチン酸ヒドラジド(イソニアジド)を軸とした抗生剤療法。 リファンピシンは細胞内移行性が高いのでマクロファージ内に潜伏する結核菌に奏功する。 リファンピシンを主体とする治療では治療開始の早期に胸部X線での陰影の拡大が見られることがある(初期悪化) が、培養成績が好転しているならば続行する。
初回で菌を絶滅させないと次回からは高率で耐性化する。
手術術式は、肺切除術や空洞切開術を行う。
外科手術の適応条件は、
多剤耐性結核菌とは殺菌作用を持つリファンピシンおよびイソニアジドに耐性を獲得したものをいう。
結核性肉芽腫がリンパ節病変から血管へ侵食すると敗血症に陥り、全身性に粟粒大の結核結節が形成される。 激しい炎症のため白血球数やCRP値が増大し、アネルギーによってツベルクリン反応が陰性化する。 増悪化するのは全体の5%である。
しばしばDICを合併する。髄膜炎合併の早期診断がもっとも重要となる。
一次結核として生じるものと、二次結核における菌の血中散布によるものとがあり、後者が多い。
本症は様々な様相を呈することがある。
血行性に結核菌が撒布されることで両側の下肺野優位にびまん性粒状影が生じ、粒状影の内部に小さな空胞を伴 うことがある。
肉芽腫が証明される。
肉芽腫が証明される。
小結節散布が認められる。
結核菌が陰性となることがあるが、これは経気管支的ではなく血行性に菌が撒布されるためである。
concentric calcification が特徴的である。
結核菌と癩菌を除いた抗酸菌による感染症である。
もともと非定型抗酸菌は常在菌であるため、易感染性宿主や中年女性に好発する。 特にAIDS患者では播種性感染症を来たし、AIDSの指標疾患のひとつである。
本症の起炎菌として最多であり、多剤耐性で難治性のことが多い。
東日本に多く分布している。
中年男性に好発する。抗結核薬に感受性が高い。
咳嗽が長期間続く。
結核と同様である。
マクロライド系抗生剤、特にクラリスロマイシンが有効である。 MACに対しては、リファンピシンなどの抗結核薬にマクロライドあるいはニューキノロンを加えた多剤併用療法を行 なう。
好気性の放線菌であるが、菌糸で発育するなど真菌に近い性質を有するノカルジアによる肺感染症である。
インフルエンザ菌や大腸菌、クレブシェラ、緑膿菌などグラム陰性桿菌によるものが多い。
咳反射の低下などによる嚥下性肺炎。
高齢者では炎症性反応の低下が見られるため、発熱や咳嗽などの定型的な症状に乏しく、全身倦怠感や食欲不振が主 徴となる。
嚥下障害・咽頭反射・咳嗽反射の低下がある患者が、口腔内容物や嘔吐した胃液を吸引することによって感染する。
胃内容物の誤嚥を特に Mendelson's syndrome という。
嫌気性菌(Bacteroides,Peptococcusなど)やカンジダなどの口腔内常在菌が起炎菌であることが多い。 歯周菌のほとんどを占める嫌気性菌を誤嚥するからである。
加齢や脳血管障害などで嚥下中枢の機能が低下すると誤嚥を生じやすくなる。
full stomach や肥満の患者で生じやすい。 また脱分極性筋弛緩薬は一過性の筋収縮によって胃内容の逆流を生じることがある。
誤嚥から1週間ほど経て発症し、発熱・咳嗽・悪臭のある喀痰などを呈する。 ただし胃酸誤嚥などによる化学性肺炎では誤嚥の直後より呼吸困難・咳嗽・発熱・過呼吸をきたすことが多い。
聴診では肺底部にラ音を聴取する。
誤嚥した部位に浸潤影をきたす。
胃酸によって瞬時に肺損傷を来たす。
肺間質への血漿漏出によってショックに発展することもある。
胃内容物の誤嚥を疑った場合は直ちに気管内挿管を行ない、気管内吸引を実施する。 胸部写真にて浸潤影もしくは局在性無気肺を認めた場合は気管支ファイバーにて選択的に吸引する。
軽度の低酸素血症では酸素投与のみでも効果がある。 しかし誤嚥量が多量の場合でアシドーシスが顕著な場合には予防的に人工呼吸管理が望ましい。 特に喘鳴が顕著で十分な酸素投与にても PaO2 が 60mmHg 以下であれば、人工呼吸の適応となる。
広域スペクトルの抗生剤や併用療法によって正常細菌叢が弱体化し、それに代わって耐性菌の出現や日和見感染 が起こる(菌交代現象)。
Akimichi Tatsukawa