肺気腫は閉塞性の換気障害によって労作時呼吸困難をきたすCOPDの一つに分類され、病理学的に「肺胞壁 の破壊による、線維化を伴わない気腔の拡大」と定義される肺疾患である。
病変は終末細気管支よりも遠位、つまり呼吸細気管支と肺胞であるが、その主座が細葉内のいずれにある かによって葉中心性肺気腫 centrilobular・汎小葉性肺気腫 panlobular・遠位小葉中心性肺気腫に分類 される。 小葉中心性肺気腫では病変は呼吸細気管支にとどまり、より抹消側の肺組織は保たれている。汎小葉性肺 気腫では細葉を構成するいずれの部位も病変が均等に存在する。遠位小葉中心性肺気腫では細葉の遠位で ある肺胞道や肺胞嚢に主として病変が存在する。
肺気腫の原因としては喫煙やα1-アンチトリプシンの欠損があげられる。
そもそも肺の基質はコラーゲンとエラスチンである。 喫煙はこのエラスチンを加水分解する作用を持つエラスターゼ elastase の活性を高めることで肺胞壁を破壊 する。 またα1-アンチトリプシンは抗エラスターゼ活性をもつため遺伝的にα-アンチトリプシンが欠損している とエラスターゼ活性が高まり、肺気腫を招く。本症では臨床的には若年発症となるが、欧米に比べて日本では稀であ る。
肺の呼吸機能は気道での換気と肺胞でのガス交換によって担われる。 肺気腫ではまず気道の炎症による気道の狭窄と、肺胞壁の破壊に伴う弾性力の低下(コンプライアンスの 増加)によって換気が障害される。 すなわち肺胞壁が破壊されて気道に隣接する肺胞組織の牽引力が減少することによって特に呼気時に気道 が虚脱する。
また肺胞が破壊されて拡散面積が減少すると肺拡散能が低下して肺胞でのガス交換が障害される。 ガス交換能力の低下は低酸素血症を招き、低酸素性肺血管収縮によって肺動脈枝を閉塞すると肺高血圧に 発展する。 肺動脈圧の持続的な亢進は右心室の後負荷を増大させ、最終的には右心不全へと導いていく。
Akimichi Tatsukawa